年金をもらっている親で扶養控除を受けるためにやるべきこと

扶養って自分の子供にしかあてはまらないと思っていませんか?

 

実は、自分の両親や祖父母、兄弟姉妹から配偶者(妻や夫の)の両親など扶養の対象となる範囲は、結構広いんです。

 

扶養が1人増えるだけで、税金が5万円から10数万円安くなります。

 

今回は、親(祖父母、配偶者の両親含む)を対象に扶養控除を受けるためにすべきことを紹介しています。

 

親に収入があっても条件をクリアしていれば大丈夫。

 

あてはまる人がいないか、ぜひチェックしてみてください。

 

この記事を読んでほしい人
  • 親と同居している人
  • 親に仕送りをしている人
  • 年末調整の担当者

 

この記事を読んでわかること
  • 親で扶養控除を受けるための条件
  • 扶養に入れる税金上のメリット
  • 扶養控除等申告書の書き方

 

扶養控除とは

タックスアンサー No.1180 扶養控除

納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。これを扶養控除といいます。

 

控除対象扶養親族にあてはまると扶養控除が受けられ、税金が安くなります。

 

それでは対象となる人についてみていきましょう。

 

その年の12月31日時点で、次の4つの要件すべてにあてはまる人です。

 

  1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人
  2. 納税者と生計を一にしていること
  3. 年間の合計所得金額が38万円以下であること
  4. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと

 

今回は親を扶養に入れて、税金を安くするための話なので、重要なのは2と3になってきます。

 

内容については、後ほど詳しく解説します。

 

控除してもらう金額ですが、次の表をご覧ください。

 

区分 所得税の控除額 住民税の控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円 33万円
老人扶養親族(同居していない) 48万円 38万円
老人扶養親族(同居している) 58万円 45万円

 

控除対象扶養親族とは、12月31日時点で16歳以上の人ですので、親なら100%クリアです。

 

控除額が加算される「老人扶養親族」の定義ですが、12月31日時点で70歳以上の人があてはまります。

 

同居は一緒に住んでいるパターンだけでなく、1年以上の長期入院でも同居として扱います。

 

ただし、老人ホームなどへ入所しているときは、同居には該当しません。

「生計を一にしている」ってどう判断する?

 

法律の解釈としては、次のような説明になっています。

 

所得税法 基本通達2-47

法に規定する「生計を一にする」とは、必ずしも同一の家屋に起居していることをいうものではないから、次のような場合には、それぞれ次による。

(1) 勤務、修学、療養等の都合上他の親族と日常の起居を共にしていない親族がいる場合であっても、次に掲げる場合に該当するときは、これらの親族は生計を一にするものとする。

イ 当該他の親族と日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には当該他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合

ロ これらの親族間において、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合

(2) 親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、これらの親族は生計を一にするものとする。

 

ものすごくざっくり言うと、同じお財布で生活していることを指します。

 

同居していなくても生活費などの仕送りをしていると、「生計を一にしている」に該当するので気をつけてください。

 

遠方に住んでいる親の生活費や入院費用などのめんどうをみているパターンです。

 

次に同居している場合と、別々に住んでいる場合をみていきます。

同居している親の場合

一緒に住んでいれば、必ず「生計を一にしている」にあてはまるかというとそうではありません。

 

2世帯住宅で親と一緒に住んでいるけど、生活費は別々に負担しているようなパターンです。

 

こういったときは、一緒に住んでいても「互いに独立した生活を営んでいる」とされ「生計を一にしている」には該当しません。

 

生活費の大部分を自分が負担しているときは、「生計を一にしている」と判断してなんの問題もありません。

別々に住んでいる親の場合

田舎に住んでいる親の生活費や入院費用などを自分が負担しているときは、「生計を一にしている」と判断してもいいときがあります。

 

両親にほとんど収入がなく、親の生活のために自分が仕送りをしているパターンです。

 

年末調整をするときに、会社に対してこのことを証明する義務はありません。

 

しかし、会社のほうもミスを避けるため確認を求めることはあるでしょう。

 

そのときのために仕送りしている事実を通帳などで証明できるようにしておくのがベターです。

いくらから「生計を一にしている」と判断される?

いくら生活費を負担したら「生計を一にしている」と判断されるか、明確な金額基準はありません。

 

同居しているときだけでなく、仕送りに関しても同じです。

 

生活の状況は人によって全く違うので、一律の基準を作ることができないからだと思います。

 

このあたりは、完全に個別の状況で判断していくことになります。

 

月に生活費が20万円必要で、そのうち15万円を自分が負担しているようなパターンだと問題ないと思います。

 

ただし、1~2万円ほどのお小遣い程度の金額を渡している場合だと「生計を一にしている」と判断はされないでしょう。

 

 

所得金額が38万円以下ってどういうこと?

次に重要なのが、親の所得が38万円以下かどうかです。

 

この「所得」という言葉がくせ者です。

 

まず「所得」と「年収」・「収入」は違うということを覚えてください。

 

1年間の給料や年金収入の合計から一定額を控除した金額が、「所得」となります。

 

給料のみ、年金のみ、給料と年金があるの3パターンでみていきます。

親の収入は給料のみ

親がアルバイトなどで給料をもらっているときは、毎月の収入からおおよその1年間の給料の合計額を計算してください。

 

その合計額から「給与所得控除額」というものを引いた残りが、「所得」になります。

 

給与所得控除の最低額は、65万円です。

 

よって、親の給料の合計額が103万円以下なら所得金額は38万円以下になります。

 

年収 103万円-給与所得控除額 65万円=所得 38万円

 

  • 親の給料の合計額が、103万円を超えている→扶養には入れない
  • 親の給料の合計額が、103万円以下である→扶養に入れる

 

親の収入が給料のみのときは、年収が103万円以下なら扶養の対象になると覚えておけば大丈夫です。

親の収入は年金のみ

親の収入が年金のみのときは年間の年金収入の合計額と、親の年齢を確認してください。

 

年金収入の合計額から「公的年金等控除額」というものを引いた残りが、「所得」になります。

 

この「公的年金等控除額」は、年齢によって控除される最低額が変わります。

 

  • 65歳未満:最低70万円
  • 65歳以上:最低120万円

 

親が65歳未満のとき

  • 年金収入の合計額が、108万円を超えている→扶養に入れない
  • 年金収入の合計額が、108万円以下である→扶養に入れる

 

親が65歳以上のとき

  • 年金収入の合計額が、158万円を超えている→扶養に入れない
  • 年金収入の合計額が、158万円以下である→扶養に入れる

 

親の年齢によって、扶養の対象になる年金収入の合計額が変わってくるので注意してください。

 

ちなみに遺族年金や障害年金は、所得税の非課税となる年金収入なので、この判定に含めなくて大丈夫です。

親の収入は給料と年金

アルバイトなどでの収入と、年金収入があるときは少し複雑になります。

 

所得金額38万円以下の判定は、合計で行いますので注意してください。

 

【65歳の親、給料96万円、年金144万円のケース】

 

  1. 給料 96万円-給与所得控除額 65万円=31万円
  2. 年金 144万円-公的年金等控除額 120万円=24万円
  3. 所得:31万円+24万円=55万円>38万円

 

個別の所得は38万円以下ですが、合計すると38万円を超えているので、このケースでは扶養の対象にはなりません。

年末調整で親を扶養に入れる

年末近くになると会社から渡される扶養控除等申告書です。

 

赤枠で囲ったところに親の個人情報を記載することになります。

 

 

それでは、ケースごとに具体的な書き方をみていきます。

親が70歳以上で同居している

同居している親を扶養していて、年齢が70歳以上だと控除額は所得税58万円・住民税45万円です。

 

あなたの年収に応じて、7万円から10数万円の節税になります。

 

記載内容は、次を参考にしてください。

 

「同居老親等」のところにチェックを入れるのを忘れないように。

 

平成31年(令和1年)に関しては、昭和25年1月1日以前に生まれた人が対象となります。

 

 

 

よく間違っている方がいるのですが、扶養控除等申告書に記載する住所は、住民票の住所ではなく、実際に住んでいる場所の住所です。

 

親の住民票をあなたの家にまだ移していなくても、「同居」として扱いますので「別居」扱いにしなくて大丈夫です。

親が70歳以上で別の場所に住んでいる

チェックを入れるところが、「その他」になります。

 

控除額は、所得税48万円・住民税38万円です。

 

あなたの年収に応じて6万円から10数万円の節税になります。

 

 

 

親が70歳未満の場合

70歳未満の親は、一般の控除対象扶養親族に該当するので、どこにもチェックを入れません。

 

控除額は、所得税38万円・住民税33万円です。

 

あなたの年収に応じて5万円から10数万円の節税になります。

 

 

 

 

まとめ

親が扶養の対象になるなら扶養控除等申告書に必要事項を記載して、ぜひ税金の控除を受けてください。

 

1年では数万円ですが、積み重なると結構な金額になります。

 

もし年末調整に間に合わなくても確定申告書を提出して、控除を受ければ問題ありません。

 

5年前までさかのぼれるので、もし過去の分を提出するときはお早めに。

 

扶養に入れた親に障害があるのなら、別の控除が受けられる可能性があるのでこちらの記事も参考にしてください。

 

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