不動産の仕訳は購入時に土地と建物にわけて行うべし

この記事を読んでほしい人
  • 不動産を購入した大家さん
  • 不動産購入時の仕訳方法を知りたい方

不動産の購入金額を按分

マンションの一室などを事務所として利用するため購入した場合、購入にかかった費用を建物部分と土地部分にわける必要があります。

 

ただし建物と土地の代金が契約書などにはっきりと書かれていないことがあります。

 

そういったときは合理的な方法で、按分計算をする必要がでてきます。

 

一般的な方法である消費税額から逆算する方法と、固定資産税評価額を利用する方法の2つを紹介します

消費税額から逆算

売買契約書に消費税額が明記されている場合はその金額を使って、消費税の課税対象である建物の金額を算出します。

 

消費税額÷8×108=建物の税込金額

 

※消費税率が10%になれば、消費税額÷10×110で算出

 

建物の金額がわかれば土地の金額は、購入金額−建物の金額=土地の金額で求められます。

 

仕訳例の条件
  • 不動産の購入金額:824万円
  • 消費税額:24万円

 

24万円÷8×108=324万円(建物の税込金額)

 

824万円-324万円=500万円(土地の金額)

 

借方 金額 貸方 金額
建物 324万円 普通預金 824万円
土地 500万円
合計 824万円 合計 824万円

 

不動産の固定資産税評価額を使う方法

消費税額が明記されていない場合は、固定資産税評価額を使って按分計算を行います。

 

購入金額×(建物の固定資産税評価額÷土地建物の固定資産税評価額合計)=建物の金額

 

土地の金額は先ほどと同じで購入金額−建物の金額=土地の金額で求めます。

 

固定資産税を計算するために使われる固定資産税課税標準額は、各自治体ごとに減税などが考慮されています。

 

実際の評価額とは違っている可能性が高いので利用できません。

 

仕訳例の条件
  • 不動産の購入金額:500万円
  • 土地の固定資産税評価額:240万円
  • 建物の固定資産税評価額:225万円
  • 固定資産税評価額の合計:465万円

 

5,000,000円×(2,250,000円÷4,650,000円)=2,419,354円(建物の税込金額)

 

5,000,000円-2,419,354円=2,580,646円(土地の金額)

 

借方 金額 貸方 金額
建物 2,419,354円 普通預金 5,000,000円
土地 2,580,646円
合計 5,000,000円 合計 5,000,000円

 

契約書に消費税が明記されていることはあまりないので、按分計算で使うことが多い不動産の固定資産税評価額の調べ方をご紹介します。

 

 

不動産の固定資産税評価額の調べ方

固定資産税の課税明細書

毎年5月ごろ、不動産を持っている自治体から固定資産税の納税通知書が送られてきます。

 

この納税通知書と一緒に課税明細書も送られてきます。

 

課税明細書の価格や評価額と書かれているところの金額を確認しましょう。

固定資産評価証明書

固定資産税は、その年の1月1日に不動産を所有している人に課税されます。

 

そのため1月2日以降に、不動産を購入した人には固定資産税は次の年から支払うことになります。

 

年の途中で不動産を購入したときは、課税明細書は翌年にならないと送られてこないので、固定資産評価証明書を取得しましょう。

 

証明書の取得は、自治体の固定資産税課(役所によって名称は変わります。)に申請して行います。

 

寝屋川市の場合は、固定資産税課に「固定資産課税台帳登録事項証明申請書」を作成して提出することになります。

 

申請するのが不動産を購入した本人、同居の親族のときは本人確認書類(免許証)だけでOKです。

 

代理人が申請するときは、委任状が必要になるのであらかじめ用意しておきましょう。

 

按分計算の方法、固定資産税評価額の調べ方がわかったところで、不動産を購入したときにかかってくる諸経費の取り扱いをみていきます。

不動産の価格に諸経費を含めるのか

不動産を購入した場合、購入金額以外でも様々な経費がかかってきます。

 

代表的なものに、次の5つの経費があります。

  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 不動産取得税
  • 契約書に貼る収入印紙
  • 固定資産税の清算金

不動産の価格に含めるもの

仲介手数料、固定資産税の清算金は、不動産の価格に含めることになります。

 

建物と土地の金額を出したあと、その金額を基に按分計算を行います。

 

資産を購入してその資産を使うために支払った経費があれば、その金額は不動産の価格に含めるという考え方があるからです。

不動産の価格に含めなくていいもの

登記費用、不動産取得税、契約書に貼った収入印紙は、不動産の価格に含めずその年の経費にすることもできます。

 

先ほどの考え方の例外として認められているからです。

 

国税庁 タックスアンサー No.5400

次に掲げるような費用については、減価償却資産の取得に関連して支出した費用であっても、取得価額に算入しないことができます。

(1) 次のような租税公課等
イ 不動産取得税又は自動車取得税
ロ 新増設に係る事業所税
ハ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用

諸経費も考慮した土地建物の仕訳

数字は私が担当したケースをいじったものになります。

 

若干おかしな数字になっているところもありますが、あくまで例ですのでご容赦ください。

 

購入した年に、最も多くの経費を計上できるように考えていきます。

 

仕訳例の条件
  • 建物の取得価額:2,419,354円
  • 土地の取得価額:2,580,646円
  • 固定資産税の清算金:60,000円
  • 不動産の仲介手数料:302,400円
  • 不動産取得税:103,000円
  • 司法書士の登記手数料:50,000円

 

固定資産税の清算金、不動産屋に支払う仲介手数料は、取得価額に含める必要がありますので按分計算を行います。

 

固定資産税の清算金

建物分:60,000円×(2,419,354円÷5,000,000円)=29,032円

土地分:60,000円-29,032円=30,968円

 

不動産の仲介手数料

建物分:302,400円×(2,419,354円÷5,000,000円)=146,322円

土地分:302,400円-146,322円=156,078円

 

建物の取得価額

2,419,354円+29,032円+146,322円=2,594,708円

 

土地の取得価額

2,580,646円+30,968円+156,078円=2,767,692円

 

借方 金額 貸方 金額
建物 2,594,708円 普通預金 5,515,400円
土地 2,767,692円
租税公課(不動産取得税) 103,000円
支払手数料(司法書士の登記手数料) 50,000円
合計 5,515,400円 合計 5,515,400円

 

 

まとめ

不動産を購入したら購入金額を建物と土地にわける必要があることをわかってもらえましたでしょうか。

 

そもそも契約書に建物と土地の金額がわけて記載されていれば問題ないのですが、ほぼそういった契約書はないと思います。

 

按分計算には、契約書に載っている消費税額を使う方法と不動産の固定資産税評価額を使う方法の2パターンご紹介しました。

 

建物は減価償却をして毎年経費計上していくので、購入した年の土地建物の計上金額がずさんだとずっと間違った計算を行うことになります。

 

不動産の購入金額以外の仲介手数料などにも支払ったときに経費になるもの、不動産の購入金額に含めて按分計算を行うものの2種類があります。

 

正しい計算方法を用いて、しっかり按分計算をしましょう。

 

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