車の下取りと購入が同時に起こったときの仕訳について

車を購入したときの明細を見ると、本体価格以外にも色んな項目がありますよね。

 

これを仕訳にするのが結構大変で、下取りがあるとより難しく感じてしまいます。

 

我々税理士でも頻繁に目にするわけではないので、きちんと調べてから処理をするくらいです。

 

ポイントを押さえておけば間違えることはないので、車の下取りと購入の仕訳方法について解説していきます。

 

この記事を読んでほしい人
  • 車の仕訳をマスターしたい人
  • 車の下取りと購入の仕訳がわからない人
  • 運送業などの会社の経理担当者

 

この記事を読んでわかること
  • 車の下取りの仕訳
  • 車の購入の仕訳

 

車(固定資産)の取得価額について

通常、車の購入費用は購入した年に全額を経費にすることはできません。

 

国が決めた年数(耐用年数という)で、経費にしていくことになります。

 

これを減価償却と言います。

 

この減価償却を正しく行うためのポイントは、購入時の仕訳を間違えないことです。

 

車の取得価額に含めるもの、含めなくてもいいものを分けていく作業が非常に重要となります。

 

購入した車の取得価額には、次のものが含まれます。

 

  • 資産の購入費用
  • 資産を事業の用に供するために直接要した費用
  • 引取運賃
  • 荷役費
  • 運送保険料
  • 購入手数料
  • 関税
  • その資産の購入のために要した費用

 

次のような費用については、車の取得に関連して支出したものであっても、取得価額に含めなくてもいいとされています。

 

  • 自動車取得税など車関係の税金
  • 検査や登録のために要する費用
  • 分割払いのローン金利
  • 分割払いの割賦手数料

 

このあたりのルールは、国税庁のホームページに書かれています。

車購入時の明細を勘定科目でどう表すか

車を購入したときにもらう明細って、色んな項目があってわかりづらいですよね。

 

一般的には、次のようなものが書かれています。

 

  • 車両本体価格
  • 附属品価格
  • 自賠責保険、自動車取得税など
  • 検査登録料、車庫証明費用
  • 登録代行費用
  • リサイクル関連費用
  • ローン金利
  • 割賦手数料
  • 納車費用

 

上記の項目は、全て車の取得価額とすることが基本です。

 

ただし、そうすると購入した年に計上できる経費が少なくなってしまいます。(最終的に経費にできる金額は変わらない)

 

できるだけ経費を多く計上できるように、これらを一つずつ適切な勘定科目に振り分けていきます。

 

明細書の項目 勘定科目
車両本体価格、附属品価格 車両運搬具
自賠責保険、任意の自動車保険 保険料
自動車取得税、重量税、自動車税 租税公課
検査登録料、車庫証明費用 支払手数料または租税公課
登録代行費用 支払手数料
リサイクル関連費用(注) 預託金またはリサイクル預託金
ローン金利 支払利息
割賦手数料 長期前払費用
納車費用 車両運搬具

(注)リサイクル関連費用のうち資金管理料金は、経費にすることができます。(数百円ですが)

 

 

法人が車の購入と下取りをした場合の仕訳

車を新しく購入するときは、前から乗っていた車を下取りに出すことが多いですよね。

 

この下取りが、車の仕訳をややこしくする原因になっています。

 

下取りと購入の仕訳を別々で考えると、理解しやすくなります。

 

以下の条件で、下取りと購入の仕訳を考えてみます。

 

消費税の取り扱いに関しては、考慮せずに仕訳を作っていきます。

 

仕訳例の条件
  • 購入した車両の本体価格、附属品価格:1,600,000円
  • 自賠責保険:26,000円
  • 税金:60,000円
  • 検査登録代行費用:30,000円
  • リサイクル関連費用:15,000円(300円が資金管理料金)
  • 下取り価格:100,000円
  • 下取りする車の帳簿価額:200,000円
  • 下取りする車のリサイクル預託金:13,000円

 

購入の仕訳

購入は項目が多いので難しく感じてしまいますが、一つずつ潰していくとそれほど難しくありません。

 

借方 金額 貸方 金額
車両運搬具 1,600,000円 普通預金 1,731,000円
保険料 26,000円    
租税公課 60,000円    
支払手数料 30,000円    
リサイクル預託金 14,700円    
支払手数料 300円    
合計 1,731,000円 合計  1,731,000円

 

自賠責保険などを細かく経費として計上しなくていいときは、借方の車両運搬具が1,716,000円となります。

下取りの仕訳

下取りは、所有していた車を売却したと考えます。

 

下取り価格だけでなく、その車の帳簿価額と購入時に資産計上したリサイクル預託金の金額が必要です。

 

借方 金額 貸方 金額
普通預金 100,000円 車両運搬具 200,000円
固定資産売却損 113,000円 リサイクル預託金 13,000円
合計 213,000円 合計 213,000円

 

下取りだけなら10万円は預金が増えることになるので、いったん普通預金を借方にもってきました。

 

ここで下取り時までの車の減価償却をどうするかという問題が出てきます。

 

厳密に会計処理をするならその月までの減価償却費を計上し、帳簿価額200,000万円から控除(直接法の場合)することになります。

 

税引前当期純利益に与える影響は同じですので、中小企業はそこまでする必要はないかと思います。

両方の仕訳を合わせる

最後に2つの仕訳を合算します。

 

借方 金額 貸方 金額
車両運搬具 1,600,000円 普通預金 1,631,000円
保険料 26,000円 車両運搬具 200,000円
租税公課 60,000円 リサイクル預託金 13,000円
支払手数料 30,000円    
リサイクル預託金 14,700円    
支払手数料 300円    
固定資産売却損 113,000円    
合計 1,844,000円 合計 1,844,000円

 

購入の仕訳の普通預金1,731,000円-下取りの仕訳の普通預金100,000円が、支払金額1,631,000円となります。

法人が車を分割払いで購入した場合の仕訳

分割払いだと支払いは一度ではなく毎月発生し、割賦手数料も発生します。

 

以下の条件で、下取りと購入の仕訳を考えてみます。

 

消費税の取り扱いに関しては、考慮せずに仕訳を作っていきます。

 

仕訳例の条件
  • 購入した車両の本体価格:1,600,000円
  • 自賠責保険:26,000円
  • 税金:60,000円
  • 検査登録代行費用:30,000円
  • リサイクル関連費用:15,000円(300円が資金管理料金)
  • 割賦手数料(50回払い):300,000円
  • 下取り価格:100,000円
  • 下取りする車の帳簿価額:200,000円
  • 下取りする車のリサイクル預託金:13,000円

 

購入の仕訳

分割払いのときは、すぐに代金を支払うわけではないので長期未払金という勘定科目を使います。

 

借方 金額 貸方 金額
車両運搬具 1,600,000円 長期未払金 2,031,000円
保険料 26,000円    
租税公課 60,000円    
支払手数料 30,000円    
リサイクル預託金 14,700円    
支払手数料 300円    
長期前払費用 300,000円    
合計 2,031,000円 合計  2,031,000円

下取りの仕訳

下取り価格10万円は、借方に長期未払金をもってきました。

 

借方 金額 貸方 金額
長期未払金 100,000円 車両運搬具 200,000円
固定資産売却損 113,000円 リサイクル預託金 13,000円
合計 213,000円 合計 213,000円

両方の仕訳を合わせる

最後に2つの仕訳を合算します。

 

借方 金額 貸方 金額
車両運搬具 1,600,000円 長期未払金 1,931,000円
保険料 26,000円 車両運搬具 200,000円
租税公課 60,000円 リサイクル預託金 13,000円
支払手数料 30,000円    
リサイクル預託金 14,700円    
支払手数料 300円    
長期前払費用 300,000円    
固定資産売却損 113,000円    
合計 2,144,000円 合計 2,144,000円

 

購入の仕訳の長期未払金2,031,000円-下取りの仕訳の長期未払金100,000円が、支払金額1,931,000円となります。

ローンの支払時の仕訳

分割で支払っていくローンの金額は、支払い時に費用を計上するのではなく、長期未払金を取り崩す処理をします。

 

今回は50回払いですので、長期未払金1,931,000円÷50=38,620円が1回分の支払金額です。

 

割賦手数料も、300,000円÷50=6,000円という計算をします。

 

借方 金額 貸方 金額
長期未払金 38,620円 預金 38,620円
支払手数料 6,000円 長期前払費用 6,000円
合計 44,620円 合計 44,620円

 

割賦手数料は、ローンの支払いに合わせて支払手数料に振り替えても、決算時に1年分を振り替えてもかまいません。

 

その場合は、300,000円×12÷50=72,000円を決算時に計上します。

 

 

個人事業主が事業用の車を下取りした場合

個人事業主が100%事業のために使っていた車を下取りしたときは、法人と違う処理になるので注意が必要です。

 

下取りの仕訳に、事業主貸という勘定科目が出てきます。

 

借方 金額 貸方 金額
普通預金 100,000円 車両運搬具 200,000円
事業主貸 113,000円 リサイクル預託金 13,000円
合計 213,000円 合計 213,000円

 

個人事業主の損益は、事業所得という区分で税金を計算しています。

 

今回のように車などの固定資産を売却したときの損益は、譲渡所得という別の区分で税金を計算することになります。

 

ですので、固定資産売却損という勘定科目は使用せず、事業主貸という勘定科目を使うことになります。

 

利益が出たときは、固定資産売却益ではなく、事業主借を使います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

 

複雑に感じていた車の仕訳も一つずつ分解して考えれば、なんとかなりそうですよね。

 

最初の仕訳を間違えると、その後もずっと間違った減価償却をしてしまいます。

 

最初にきっちりと処理をしてください。

 

簿記の勉強をしたことがない人は、こういった本を読んでみるのもいいかと思います。